スマートホームのネットワークプロトコル完全ガイド:Wi-Fi・Zigbee・Z-Wave・Thread・Matter

スマート電球にはなぜいつも専用のハブが必要なのでしょうか。その裏側で何が起きているのかを見ていきましょう。

スマートホーム機器のプロトコルがバラバラな理由

常時電源が確保できるカメラのような機器と、何年もバッテリーだけで動かし続けたいセンサーとでは、消費電力をどれだけ抑えられるか、どれだけ遠くまで・何台の機器と通信できるか、どれだけ大量のデータを素早くやり取りできるかという要求がまったく異なります。この違いが、単一のプロトコルではなくWi-Fi・Zigbee・Z-Wave・Threadが並行して使われている理由です。

Wi-Fi方式のスマートホーム機器

Wi-Fiのスマートプラグやロボット掃除機、スマートカメラは、すでに家にあるルーターに直接接続できるため、専用のハブが不要です。ただしWi-Fi通信は比較的消費電力が大きいため、数か月から数年単位で1つの電池だけで動かし続けたい小型センサーにはあまり使われません。また、Wi-Fi機器の数が増えるほど、ルーター1台に負荷が集中しやすくなります。

Zigbeeとは

ZigbeeはIEEE 802.15.4規格をベースにした低消費電力の無線プロトコルで、照明やセンサーのように少量のデータをやり取りする機器に適しています。最大の特徴はメッシュネットワーク構造で、常時電源につながった機器(スマート電球など)が中継役となり、ハブ単体では届かない離れた部屋までネットワークを広げられます。ただしZigbee機器の利用にはほとんどの場合、専用のハブ(ブリッジ)が必要です。

Z-Waveとは

Z-Waveも目的はZigbeeと似た低消費電力のメッシュプロトコルですが、2.4GHz帯ではなく国によって異なるサブ1GHz帯(900MHz帯など)を使用する点が異なります。この帯域はWi-Fi・Zigbee・Bluetoothが集中しがちな2.4GHz帯と重ならないため、家庭内の電波干渉に比較的強いという利点があります。Z-Waveも他のスマートホームシステムと連携させるには、多くの場合専用ハブが必要です。

Threadとは

ThreadもZigbeeと同様にIEEE 802.15.4の無線技術を基盤とした低消費電力メッシュネットワークですが、各機器がIPv6ベースのアドレスを持ち、複雑な変換処理なしにIPネットワークとより直接的に通信できるよう設計されています。アップルやグーグルなど複数のスマートホーム企業が参加するThread Groupが規格を管理しており、Threadネットワークをインターネットにつなぐには境界ルーター(ボーダールーター)役の機器が必要です。

Matter標準とは

これまでスマートホーム機器は、Apple Home、Google Home、Amazon Alexa、Samsung SmartThingsなど、メーカーやプラットフォームごとに互換性がバラバラという問題を抱えていました。2022年に登場したMatter標準は、旧Zigbeeアライアンスを前身とするConnectivity Standards Allianceが主導し、Wi-FiやThreadなどの通信方式の上で動くアプリケーション層の共通規格を作ることで、「Matter認証」機器1つで複数のプラットフォームをまたいで使えるようにすることを目指しています。

メッシュ構造とスター構造の違い

Zigbee・Z-Wave・Thread機器は互いの信号を中継し合うメッシュ構造であるため、機器の数が増えるほどネットワーク全体のカバー範囲と安定性が向上する傾向があります。一方、ほとんどのWi-Fiスマートホーム機器はルーターという1つの中心地点に直接接続するスター構造のため、個々の機器の接続品質はルーターとの距離や障害物に大きく左右されます。

新しいスマートホーム機器を選ぶときに確認したいこと

新しいスマートホーム機器を導入する際は、すでに使っているスピーカーやハブ(特定プラットフォーム専用のハブなど)と無線プロトコルが合っているかをまず確認しましょう。最近は製品パッケージや商品ページにMatter対応の有無が表示されることが増えており、Matter認証製品を選んでおけば、後でプラットフォームを変更しても互換性の問題に直面する可能性を減らせます。

バッテリー寿命こそが隠れた設計上の制約

1つの家庭で3つも4つも異なる無線プロトコルが同時に動いている本当の理由は、たいていバッテリー寿命に行き着きます。コイン電池で1年以上動かし続けたいドアセンサーや水漏れセンサーは、Wi-Fiの消費電力をとても許容できないため、代わりにZigbeeやZ-Wave、Threadのような低消費電力メッシュプロトコルを標準採用します。その結果、ネットワーク上にまた1つ別のハブや境界ルーターが増えることになります。

Matterは断片化を減らすが、ハブ自体をなくすわけではない

Matterが解決するのは、あくまでソフトウェアの互換性という半分の問題です。1つの認証済み機器が、メーカー側が個別に対応を作り込まなくても、Apple Home、Google Home、Amazon Alexaなど複数のプラットフォームで動くようになります。しかし、その機器が使う無線方式そのものは変わりません。Zigbee機器やThread機器は、Matter認証の有無にかかわらず、インターネットに接続するためのブリッジや境界ルーターを依然として必要とします。ラベル上の互換性と、物理的なハブの要否はまったく別の問題です。

よくある質問

Matter認証さえあればハブは不要になりますか?

必ずしもそうとは限りません。Matterはプラットフォーム間の互換性を大きく高めますが、機器が使う無線方式(Wi-FiかThreadかなど)によって、境界ルーターやハブが必要かどうかは変わります。商品ページでMatter対応の有無と、必要な接続方式の両方を確認しましょう。

ZigbeeとZ-Waveの機器を同じハブで使えますか?

この2つのプロトコルは使用する周波数帯や通信方式が異なるため、直接通信することはできません。ただし、両方のプロトコルに対応した複合ハブ製品を使えば、ハブが内部で変換を行い、1つのアプリから両方の機器を操作できる場合があります。