睡眠周期と睡眠段階の基礎知識

ひと晩の睡眠は最初から最後まで同じ状態が続くわけではなく、だいたい90分ほどの睡眠周期が何度か繰り返される形で構成されており、その周期ごとにそれぞれ役割の異なる段階が含まれている。

ノンレム睡眠 第1段階(入眠期)

覚醒から睡眠への移行にあたる最も浅い段階で、通常は数分程度しか続かない。この段階では周囲の音やわずかな刺激でも簡単に目が覚めてしまいやすく、体は緩み始めているものの、意識はまだ完全には覚醒状態から離れていない。

ノンレム睡眠 第2段階(浅い眠り)

心拍数と体温が下がり始め、脳波には睡眠紡錘波と呼ばれる特徴的な波形が現れる。この段階はひと晩の睡眠の中で占める割合が最も大きいことが多く、浅い眠りと深い眠りの間の移行段階にあたる。

ノンレム睡眠 第3段階(深い眠り)

徐波睡眠とも呼ばれ、最も目を覚ましにくい段階である。この段階では筋組織の修復や一部のホルモン分泌など、体の主な生理的修復が行われ、深い眠りはひと晩の睡眠の前半に集中して現れる。

レム(REM)睡眠

この段階では閉じたまぶたの下で眼球が素早く動き、脳の活動は覚醒に近い状態になる。生々しい夢の大部分はこの段階で見るとされ、レム睡眠は記憶の定着や感情の処理と密接に関わっていると考えられている。

ひとつの完全な睡眠周期はおよそ90分続く

ノンレム睡眠第1段階からレム睡眠の終わりまでがひとつの完全な周期を構成し、ひと晩の睡眠は通常この周期が4~6回ほど繰り返されることで成り立っている。最初から最後まで同じ段階がずっと続くわけではない。

夜が深まるほどレム睡眠の占める割合が増えていく

夜が進むにつれて、後の周期では深い眠りの占める割合が徐々に減り、代わりにレム睡眠の時間が相対的に増えていく。これが、目覚める直前の方が夢の内容を覚えていやすい理由のひとつでもある。

周期の途中で無理に起こされると疲労感が残りやすい

深い眠りの段階で無理やり起こされると、浅い眠りや周期の切れ目で目が覚めたときに比べて、頭がぼんやりしてなかなかすっきり覚醒しにくい傾向がある。これが、一部の睡眠計測アプリが浅い眠りの段階に合わせて起こそうとする理由のひとつでもある。

「8時間眠れば十分」が総睡眠時間だけでは判断できない理由

睡眠の質は総睡眠時間だけでなく、いくつかの睡眠周期をひと通りきちんと経過できたか、深い眠りとレム睡眠の割合が十分に確保できたかにも左右される。頻繁に中断される8時間の睡眠は、中断のない7時間の睡眠より実際の回復効果が劣ることもある。

睡眠段階は主にどのように測定されるのか

医学的には、脳波・眼球運動・筋肉の活動といった複数の生理信号を同時に記録する終夜睡眠ポリグラフ検査(ポリソムノグラフィー)によって睡眠段階を区分することが多い。市販の睡眠計測リストバンドやスマートウォッチの多くは、心拍数と体動のデータから間接的に推定しているため、専門機器と比べると精度に差があり、あくまで大まかな傾向の参考として捉える方が適切である。

よくある質問

深い眠りは多ければ多いほど良いのか

深い眠りは体の修復にとって重要だが、割合が高ければ高いほど良いというわけではない。健康な成人の場合、深い眠りはひと晩の睡眠のうちの一部分を占めるにすぎず、その割合を過度に追い求めることにあまり意味はない。それよりも、睡眠全体のリズムが規則正しく、きちんと完結しているかどうかの方が重要である。

市販のスマートウォッチで測定される睡眠段階は正確なのか

あくまで傾向の参考程度と考えるべきである。この種のデバイスは主に心拍数の変化と体動データから間接的に睡眠段階を推定しており、病院で使われる終夜睡眠ポリグラフ検査ほどの精度はなく、実際の段階と多少のずれが生じることがある。

夢をよく見るのは眠りが浅い証拠なのか

必ずしもそうとは限らない。夢は主にレム睡眠の段階で見るもので、正常な睡眠周期の一部である。ほぼ誰もが毎晩何度かレム睡眠を経験し、夢を見ているが、目覚めた後すぐに忘れてしまうことが多いだけである。夢をよく覚えていること自体が、睡眠の質が悪いことを意味するわけではない。