自己決定理論(SDT):動機づけの6段階

行動する理由がまったく感じられない状態から、活動そのものが楽しくてたまらない状態まで。SDTが説明する動機づけの全体像です。

無動機づけ(Amotivation)

行動しようという意図そのものがない状態です。その行動に価値を感じられなかったり、自分がうまくできるという自信が持てなかったりして、そもそも動こうとしない動機づけのレベルです。

外的調整(External Regulation)

報酬を得たり罰を避けたりするためだけに行動する、外発的動機づけの中でも最も他律的な形です。外部からの圧力や条件がなくなると、行動そのものも一緒になくなりやすいのが特徴です。

取り入れ的調整(Introjected Regulation)

罪悪感や不安を避けるため、あるいは自分自身のプライドを守るために行動する段階です。ある程度は内面化されていますが、まだ完全に自分自身のものとして受け入れられてはいない状態と説明されます。

同一化的調整(Identified Regulation)

その行動の目的や価値を自分自身で理解し、重要だと受け入れて行動する段階です。もともとは外から与えられた目標であっても、個人的に意味があると感じ始める段階です。

統合的調整(Integrated Regulation)

行動の価値が、自分の他の価値観やアイデンティティと完全にひとつに統合された段階です。何らかの目的を果たすための行動であるという点では依然として外発的動機づけに分類されますが、内発的動機づけに非常に近い形だとされています。

内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)

報酬や目的とは無関係に、その活動自体がもたらす興味や楽しさのために行動する、最も自律的な動機づけの形です。自己決定理論では、最も理想的な動機づけの状態として扱われます。

自己決定理論(SDT)とは何を主張しているか

自己決定理論(SDT)は心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した理論で、人には自律性・有能感・関係性という3つの基本的心理欲求があり、これらの欲求が満たされるほどより自律的で持続可能な動機づけが形成されると説明します。上記の6段階は、この理論の下位理論である有機的統合理論(Organismic Integration Theory)が示す、動機づけがどれだけ内面化されているかによる連続体です。

外発的動機づけはすべて同じではなく、自律性は育てられる

動機づけを内発的動機づけと外発的動機づけの2つだけに分けて考えがちですが、SDTでは外発的動機づけの中にも、その価値をどれだけ自分自身で受け入れているかによっていくつかの段階があると考えます。同じ「外から与えられた目標」であっても、無理やり従う外的調整と、自分なりに意味を見出して受け入れた同一化的調整・統合的調整とでは、持続力や満足度の面で大きく異なります。与えられた課題の中でも自分なりの選択の余地を作ったり、その課題が重要だと感じられる理由を自分自身で見つけたりすることが、動機づけを外的調整から同一化的調整の方向へ移すのに役立つとされています。

よくある質問

内発的動機づけだけが良い動機づけなのですか?

いいえ。人生の多くの活動は、もともと興味深いとは限りません。そうした場合でも、自律性の高い外発的動機づけの形である同一化的調整や統合的調整によって、十分に持続可能で満足度の高い行動を続けられるとされています。

報酬を与えると内発的動機づけが下がることもありますか?

SDTに関連する研究では、もともと興味があって取り組んでいた活動に外的な報酬を追加すると、その活動が報酬を得るための手段だと認識されるようになり、かえって内発的動機づけが下がる場合があると報告されています。ただし報酬の形や状況によって結果は変わりえます。