浸透と拡散の原理をわかりやすく解説

野菜が塩で漬けられるとしんなりする理由から、点滴液が生理食塩水である理由まで、身近な浸透・拡散現象を原理から整理しました。

拡散とは何か

粒子が濃度の高い場所から低い場所へ自然に広がり、最終的に均一に混ざる現象を拡散といいます。エネルギーを使わずに起こる現象です。

濃度勾配:拡散を引き起こす力

濃度勾配とは、同じ空間内で場所によって粒子の濃度が異なる状態のことです。拡散はこの勾配に沿って粒子が移動し、濃度を均一にしようとする方向で自然に起こり、エネルギー(ATP)を使わない受動輸送に分類されます。濃度差がなくなると正味の移動は止まります。

浸透とは何か

浸透とは、水は通すが特定の溶質は通さない半透膜を隔てて起こる水分子の移動現象です。溶質濃度が低い側(水が相対的に多い側)から濃度が高い側(水が相対的に少ない側)へ水分子が移動し、両側の濃度を均一にしようとします。細胞膜は代表的な半透膜で、細胞内外の水分移動を調節しています。

高張液・低張液・等張液:浸透の方向を決める濃度比較

細胞内部と比べて溶質濃度が高い溶液を高張液といい、この場合細胞内の水が外へ出て細胞が収縮します。逆に濃度が低い低張液では水が細胞内に入り、細胞が膨張したりひどい場合は破裂したりします。細胞内外の濃度が同じ等張液では水の正味の移動がなく、細胞の大きさが保たれます。

野菜を塩で漬けるとしんなりする理由

塩水は野菜の細胞内部よりもはるかに濃度が高い高張液のため、細胞内の水分が浸透によって外へ出ていき、細胞が収縮して野菜全体がしんなりします。

赤血球と浸透:点滴液が生理食塩水である理由

赤血球を純粋な水(低張液)に入れると、浸透によって水が細胞内に入り続け、最終的に細胞が膨張して破裂する溶血が起こります。逆に濃い塩水(高張液)に入れると、細胞内の水分が出ていき縮んでしまいます。そのため病院の点滴液は、血液と濃度が近い等張液である生理食塩水やブドウ糖液を基本として作られ、赤血球の形を保つようにしています。

単純拡散・促進拡散・能動輸送の違い

細胞膜を通した物質の移動は大きく3つに分かれます。酸素や二酸化炭素のような小さな分子が膜を直接通過する単純拡散、ブドウ糖のように大きいまたは極性のある物質が膜の運搬タンパク質の助けを借りて濃度の高い所から低い所へ移動する促進拡散は、どちらもエネルギーを使わない受動輸送です。一方ナトリウム-カリウムポンプのように、細胞がATPエネルギーを使って物質を濃度の低い所からあえて高い所へ押し上げる移動は能動輸送と呼ばれます。

関連トピックも確認してみましょう

細胞膜や細胞小器官の基本構造が気になる方は細胞生物学の基礎を、細胞がエネルギーを作る過程は細胞呼吸とエネルギー代謝を、酵素が反応速度を高める仕組みは酵素の働きの原理を、それぞれ確認してみてください。

よくある質問

浸透と拡散は同じ現象ですか?

浸透は拡散の一種と見なせますが、区別して説明されることが多いです。拡散は気体や液体中の粒子全般が濃度の高い所から低い所へ広がる現象を指す広い概念で、浸透はその中でも半透膜を隔てて水分子だけが移動する特殊なケースを指します。

植物に水をやりすぎても問題になりますか?

はい。根の周りの土の濃度が薄くなりすぎる(水が多すぎる)と、逆に根の細胞内に水が過剰に入り込んで細胞が傷んだり、酸素供給が減って根腐れにつながったりすることがあります。逆に肥料を土に与えすぎると土の濃度が高くなり高張液の環境になって、根の水分がかえって出ていく「肥料焼け」という現象が起こることもあります。