マクレランドの欲求理論:達成・権力・親和の3つの欲求

生まれつきではなく後天的に学習される3つの社会的欲求。マクレランドはこれが職場での動機づけを左右すると考えました。

達成欲求(Need for Achievement, nAch)

挑戦しがいのある目標を設定し、自分自身の力でそれを達成することに満足を見出そうとする欲求です。アメリカの心理学者デイビッド・マクレランドは、人によって達成・権力・親和という3つの社会的欲求の強さが異なり、これらの欲求は生まれつきのものではなく人生経験を通じて後天的に学習されると論じました。達成欲求が高い人は、簡単すぎたり不可能に近かったりする目標よりも、適度に挑戦的で達成可能な目標を好み、結果に対する速やかなフィードバックを重視する傾向があります。

権力欲求(Need for Power, nPow)

他者や状況に対して影響力を行使し、コントロールしようとする欲求です。権力欲求が高い人は、他者に影響を与えたり、議論に勝ったり、責任ある立場に立ったりすることを好む傾向があります。マクレランドはこの欲求をさらに、自分自身の利益のための個人的権力欲求と、集団や組織の目標のための社会的権力欲求に区別しました。

親和欲求(Need for Affiliation, nAff)

他者と親密で友好的な関係を築き、維持しようとする欲求です。親和欲求が高い人は対立や競争よりも協力を好み、相手に良い印象を与えて関係を円滑に保つことを気にかける傾向がありますが、この欲求が強すぎると客観的な意思決定や組織運営の妨げになることもあるとされています。

理論の内容と、マクレランドによる測定方法

デイビッド・マクレランドは1961年の著書『達成する社会』などの中で、人は達成欲求(nAch)・権力欲求(nPow)・親和欲求(nAff)という3つの社会的欲求を異なる強さで持っており、マズローの欲求階層説とは異なり、これらの欲求は生まれつきではなく子ども時代の経験や文化的環境の中で後天的に学習されると論じました。測定には、あいまいな絵を見せて自由に物語を作らせる主題統覚検査(TAT)を用い、その物語の中に現れる達成・権力・親和それぞれのテーマの頻度を分析することで、各欲求の相対的な強さを推定しました。このような投影法は、自己申告式の調査に比べて社会的に望ましく見せようとする回答のゆがみを減らせる一方、採点者の解釈によって結果が変わりうるという限界も指摘されています。

職場やリーダーシップの分野ではどう応用されるか

マクレランドの理論は特に組織行動論やリーダーシップ研究で広く引用され、3つの欲求のうちどれが優勢な人にどのような業務や動機づけの方法が効果的かを論じる際に活用されます。実務上は、達成欲求が高い人には挑戦的な個人課題と明確なフィードバックを、親和欲求が高い人には協力的なチーム環境を用意することが、動機づけの観点から効果的だとされています。

よくある質問

3つの欲求のうちどれか1つしか持たない人もいますか?

ほとんどの人は3つの欲求すべてをある程度ずつ持っており、ただその相対的な強さが人によって異なるとされています。マクレランドは、その中でも特に優勢な欲求が、その人の行動パターンや好む状況を理解する手がかりになると考えました。

マズローの欲求階層説とはどう違いますか?

マズローの欲求階層説は、生理的欲求から自己実現欲求まで段階的に満たされていく普遍的な順序を前提としています。一方マクレランドの理論には段階構造がなく、達成・権力・親和という3つの社会的欲求が、人によって異なる比率で後天的に学習され共存すると考える点が異なります。