信用取引と追証(おいしょう)の本当のリスク

信用取引は手持ちの資金以上の売買を証券会社からの借り入れで行える仕組みだが、その分、想定より速く、想定より大きく損失や強制決済が発生しうる。

信用取引とは、口座を担保に証券会社から借り入れて取引すること

信用取引では、購入代金の一部だけを自己資金でまかない、残りを証券会社から借り入れる。口座内の証券や現金が担保となり、自己資金に対する損益の振れ幅が、利益も損失も両方向に拡大される。

委託保証金でポジションを持ち、維持率で持ち続ける

信用取引を始めるには、購入代金の一定割合を自己資金(委託保証金)として用意する必要がある。その後、保証金維持率という、より低いしきい値があり、値動きによって口座の純資産がそれを下回ると口座は基準を満たさなくなる。

追証は、純資産を短期間で回復させるよう求める通知

純資産が維持率を下回ると、証券会社から追証(追加保証金)の通知が届き、現金や証券の追加入金、またはポジションの決済を求められる。猶予期間は非常に短く、翌営業日など短期間で対応を求められることも多い。

期限までに応じなければ、証券会社が無断で強制決済できる

信用取引の契約上、期限までに追証に応じられない場合、証券会社は口座内のポジションを本人の同意なく強制的に決済する権利を通常持っている。決済のタイミングや価格が本人にとって有利かどうかは考慮されない。

株価下落は二重に不利に働く

株価の下落は保有資産の評価額を下げると同時に、借入額に対する自己資金の余力(純資産)も減らす。そのため信用取引の損失は、同じ値動きの現物取引よりも速く膨らみやすく、現物なら耐えられる程度の下落でも信用取引では強制決済に至ることがある。

借りたお金はタダではない——金利は日々発生する

信用取引で借り入れた部分には金利(信用金利)が発生し、通常は日割りで計算され月ごとに請求される。ポジションの損益にかかわらず、保有期間が長引くほど静かにリターンを蝕んでいく。

追証が最悪のタイミングで来やすい理由

追証は値動きによって発生するものであり、都合の良いタイミングで来るわけではない。そのため、現金を用意することも冷静に判断することも最も難しい、急激で速い相場下落の最中に発生しやすい。市場全体が大きく下げる局面では多くの信用取引口座が同時に追証となり、その強制決済による売り圧力がさらに下落を深めることもある。

レバレッジは上下どちらにも対称的に働く

借り入れによって値上がり時には自己資金に対する利回りが大きく膨らむのと全く同じ仕組みが、値下がり時にも逆方向に働く。信用取引はリスクを単に上乗せするだけでなく、その時点のポジションが向かっている方向をそのまま増幅させる。だからこそ経験豊富でリスクを理解した投資家向けの手段とされ、単に「もっと増やす」ための方法として扱うべきではない。

よくある質問

追証が発生したら、証券会社は必ず事前に警告してくれますか?

必ずしもそうとは限りません。多くの信用取引の規定では、特に相場が急変している場合、証券会社が事前通知なしに、また本人の応答を待たずにポジションを決済できる裁量を持っています。具体的な条件は契約している証券会社の規約によって異なります。

信用取引では、最初に投資した金額以上の損失が出ることがありますか?

はい。借り入れた資金で取引しているため、十分に大きな逆行が起きれば純資産がゼロになった上、投資額を超えて証券会社に借金が残ることもあります。現物取引であれば損失は投資額までに限られますが、信用取引ではその限りではありません。