マーシャの4つのアイデンティティ・ステイタスを解説

2つの軸、4つのステイタス。マーシャのアイデンティティ・ステイタス理論が示す、自分を見つけていくプロセスとは。

アイデンティティ拡散

自分の価値観や進路について積極的に探求したこともなく、特に何かに関与(コミット)してもいない状態。「まだよく分からない」という態度で決定を先延ばしにし続けることが多いとされます。特徴:探求経験が低い、関与の水準が低い、明確な目標や方向性がない、外部からの圧力がなければ決定を先延ばしにしがち。

アイデンティティ早期完了

自分自身で十分に探求しないまま、親や周囲の権威者が示した価値観・進路をそのまま受け入れて関与している状態。表面的には安定して見えるが、その確信は自己探求から生まれたものではありません。特徴:探求経験が低い、関与の水準が高い、親や権威者の期待をそのまま受け入れる、外見上は安定し自信があるように見える。

アイデンティティ・モラトリアム

進路や価値観について積極的に探求しているものの、まだ明確な決定には至っていない、いわば「探求中」の状態。心理学者エリク・エリクソンが唱えた心理社会的モラトリアムの概念と重なります。特徴:探求経験が高い、関与の水準が低い、複数の可能性を積極的に試している、不安ではあるが能動的に模索している時期。

アイデンティティ達成

十分な探求の過程を経た上で、自ら確信を持って価値観や方向性に関与している状態。マーシャが提示した4つのアイデンティティ・ステイタスの中で最も安定した状態とされます。特徴:探求経験が高い、関与の水準が高い、自分の選択の理由を自分で説明できる、危機的状況でも比較的柔軟に対処できる。

アイデンティティ・ステイタス理論とは、4つは順番通りに進むのか

アイデンティティ・ステイタス理論は、発達心理学者ジェームズ・マーシャが1966年にエリク・エリクソンのアイデンティティ発達の概念を拡張して提唱した理論です。マーシャは青年期・成人期のアイデンティティ発達を探求(exploration)と関与(commitment)という2つの軸で捉え、その組み合わせによって4つのステイタスに分類しました。必ずしも決まった順序で進むわけではありませんが、一般的には拡散や早期完了から出発し、モラトリアムでの積極的な探求を経てアイデンティティ達成に至る流れが自然だと説明されます。同じ人でも、進路・価値観・人間関係など領域によって異なるステイタスに置かれていることがあります。

大人になってからもアイデンティティ・ステイタスは変わりうるのか

はい。アイデンティティ達成に至ったからといって、それが一生固定されるわけではありません。転職、離婚、その他の重大な人生の転機をきっかけに、既存のアイデンティティを再び探求し直す「再モラトリアム化(MAMAサイクル)」と呼ばれる過程を経ることは珍しくないとされます。これは後退ではなく、継続的なアイデンティティ発達の自然な一部として理解されています。

よくある質問

早期完了は拡散よりも良い状態ですか?

単純に優劣をつけることはできません。早期完了は表面的には安定して見えますが、自ら探求していない確信であるという限界があり、拡散は探求も関与もない状態です。長期的には、十分な探求を経たアイデンティティ達成が4つの中で最も安定した状態と考えられています。

モラトリアムの時期がつらく感じるのは正常ですか?

はい。モラトリアムは複数の可能性を試しながら不確実性に耐えなければならない時期のため、不安や混乱を伴うことが多いとされます。これはアイデンティティ達成に向かう自然な過程として理解されるのが一般的です。