損失回避とは 「得より損」を強く感じてしまう心理

損失回避とは、同じ金額の「得」と「損」があった場合、損をしたときの心の痛みのほうが、得をしたときの喜びよりもおよそ2倍近く強く感じられるという心の傾向のことです。お金や人間関係、日々の習慣に関する判断に、気づかないうちに影響を与えています。

同じ金額でも「損」の方が重く感じる

行動経済学の研究によれば、1万円を失ったときの心理的な痛みは、1万円を得たときの喜びのおよそ2倍に相当するとされています。客観的な金額は同じでも、感じ方はまったく対称ではありません。

株や買い物だけの話ではない

ほとんど使っていないサブスクリプションを解約できない、期待外れの商品を返品しづらい、今の仕事や関係を「失いたくない」という理由だけで続けてしまうといった行動も、同じ損失回避の表れです。

「保有効果」と深く関係している

一度自分の物になると、まだ手に入れていない状態で評価するときよりも高く価値を感じてしまいます。手放すことが「新たに得る機会を逃す」ではなく「今持っているものを失う」と感じられるためです。

同じ内容でも言い方次第で受け止め方が変わる

「9割の雇用が守られます」と「1割の雇用が失われます」は数字としては同じ内容を伝えていますが、後者のように「損失」として提示されると、人はより慎重に、より強く反応する傾向があります。

含み損の株をなかなか手放せない理由

売却して損失を確定させることは「損をした」という事実を突きつけられる行為です。そのため、いずれ値を戻すかもしれないという期待にすがって、実際には資金を別に活かした方がよい場面でも、値下がりした株を持ち続けてしまいがちです。

この理論はどこから来たのか

損失回避は、心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1970年代後半に提唱した「プロスペクト理論」の中核をなす考え方です。人は基準点(リファレンスポイント)からの変化として利得や損失を評価し、損失は同じ大きさの利得よりも重く受け止められるとされています。この一連の研究は、後にカーネマンのノーベル経済学賞受賞にもつながりました。

対策として有効な考え方

「失いたくない」という気持ちで判断しそうになったときは、一度「もし今この株・このサブスク・この関係を持っていなかったとして、今の条件で新たに選ぶだろうか」と自問してみましょう。答えが「いいえ」であれば、そこにあるのは本当の価値ではなく、損失回避による執着である可能性があります。

よくある質問

損失回避とリスク回避は同じものですか?

重なる部分はありますが同じではありません。リスク回避は不確実な賭けよりも確実な結果を好む一般的な傾向を指すのに対し、損失回避は不確実性がほとんどない場面でも、同じ金額の損と得を非対称に評価してしまう傾向を指します。

損失回避は役に立つこともありますか?

はい。貯金や安定した人間関係など、本当に大切なものを守ろうとする慎重さにつながる面はあります。問題になるのは、値下がりした投資を「損を確定させたくない」という理由だけで持ち続けるなど、小さな損失への恐れが明らかに良い選択肢を上回ってしまう場合です。