IPジオロケーションの仕組みと精度の限界

ショッピングサイトが接続国を自動で判別するのも、動画配信サービスの地域制限も、すべてこの技術が支えています。

IPジオロケーションとは

IPアドレスだけを手がかりに、その端末がおおよそどの国・どの地域にあるかを推定する技術です。IPアドレス自体に位置情報が含まれているわけではなく、IPの範囲と実際の位置を紐づけた別のデータベースを照会することで動作します。

位置はどんなデータから推定するのか

地域インターネットレジストリ(RIR)に登録されたIP割り当て情報、通信事業者が各拠点や基地局に割り振ったIP範囲の情報、Wi-Fiルーターの信号を収集した位置情報データベース、ウェブサイトのアクセスログから蓄積された統計などを総合して位置を推定します。

精度は段階によって大きく異なる

国単位の精度は90%以上と非常に高い一方、都道府県レベルまで細かくなると精度は下がり、特に正確な町丁目や建物単位まで特定することは、原理上ほぼ不可能です。これは通信事業者が広い地域に同じIP範囲を割り当てていることが多いためです。

位置が違って表示されるよくある理由

モバイルデータ通信では実際の位置ではなく通信事業者のゲートウェイ(関門局)の位置が表示されることが多く、VPNやプロキシを使うとそのサーバーの位置が表示されます。衛星インターネットも地上局の位置として表示されるなど、IP上の位置と実際の物理的な位置が異なるケースは非常によくあります。

VPNが位置を変える仕組み

VPNをオンにすると、自分の通信はまずVPNサーバーを経由して外に出ていくため、ウェブサイト側からはそのVPNサーバーのIPアドレスしか見えません。ジオロケーションのデータベースはこのIPを照会し、VPNサーバーがある国を自分の位置と判断するため、実際の位置とは全く異なる国が表示されることになります。

日常のサービスでの活用例

オンラインショッピングサイトの通貨・言語の自動設定、動画配信サービスの地域別コンテンツ制限、銀行やカード会社による不正取引(想定外の国からの決済など)の検知、ウェブサイト訪問者統計の国別分析など、さまざまなサービスがIPジオロケーションを基盤に動作しています。

プライバシーの観点で知っておきたいこと

IPジオロケーションだけでは、通常、都市レベル以上の詳細な個人の身元や正確な住所までを特定することは困難です。ただし、おおよその地域が露出する可能性はあるため、位置情報の露出を最小限にしたい場合はVPNの利用や位置情報に基づく広告設定の確認が役立ちます。

自分のIPがどんな位置と表示されるか確認する方法と、間違っている場合の考え方

一般的なIPルックアップツールを使えば、現在の接続に紐づく国、地域、インターネットプロバイダーを確認できます。表示された都市や地域がずれているように見える場合、多くはルックアップ自体のエラーではなく、プロバイダーが広い地域に同じIP範囲を割り当てていることや、その時点でモバイルデータやVPNを使っていることを反映しているだけであることが多いです。ルーターを再起動すると割り当てられるIPアドレスが変わり、結果が変化することもありますが、公開されたデータベースが表示する内容を自分で「修正」する方法は基本的にありません。

IPジオロケーションだけでは分からないこと

IPアドレスの照会だけでは、氏名や正確な自宅住所といった個人の身元を明らかにすることはできず、あくまで端末の接続をおおまかな地理的エリアに対応づけているにすぎません。IPアドレスを特定の個人に結びつけるには、通常インターネットプロバイダーの協力と法的な手続きが必要です。IPアドレスと実際の契約者を結びつける加入者情報は、プロバイダーだけが保有しているためです。

よくある質問

IPだけで正確な自宅住所まで特定できますか?

一般的なジオロケーションサービスでは困難です。多くの場合、国・地域・都市レベルまでしか推定できず、正確な建物や住所を特定するには、プロバイダーが保有する加入者情報と法的な手続きが別途必要になります。

同じWi-Fiでも表示される位置が変わることはありますか?

はい。スマートフォンはモバイルデータ利用時とWi-Fi利用時で異なるIP帯域を使うため、ジオロケーションの結果が変わることがあり、同じルーターでもプロバイダーがIPを再割り当てすると表示される地域が変わることがあります。