対人反応性指標(IRI)が示す共感の4つのタイプ

共感はひとつの特性ではありません。心理学者マーク・デイビスの対人反応性指標は、共感を認知的なもの2つ、情緒的なもの2つの計4つの次元に分けて捉えます。

観点取得(認知的共感)

相手の心理的な視点を自発的に想像し理解しようとする傾向です。論争や対立の場面でも、相手がなぜそのように考えるのかを先に汲み取ろうとする認知的な能力を指します。

空想(認知的共感)

本や映画の登場人物の感情や状況に自分を重ねて想像する傾向です。架空の物語の中でも登場人物の立場に入り込み、共に喜んだり悲しんだりする性向を扱います。

共感的関心(情緒的共感)

困難な状況にある他者に対して感じる温かさ、憐れみ、心配といった他者志向的な感情です。「共感」という言葉で真っ先に思い浮かぶ情緒的反応にあたります。

個人的苦痛(情緒的共感)

他者の苦しい状況を目にしたときに感じる、自己志向的な不安や不快感です。相手への関心というより、その状況が自分自身に与える情緒的な負担に近い反応です。

なぜ共感は「認知」と「情緒」の2つに分かれるのか

心理学者マーク・デイビスは1980年代、共感が単一の特性ではなく多次元的なものであることを捉えるために対人反応性指標(IRI)を開発しました。観点取得と空想は他者の心理状態を理解・想像する「認知的共感」に、共感的関心と個人的苦痛は他者の状態に実際に感情で反応する「情緒的共感」に分類されます。ある人が一方の次元では高く、別の次元では低いということも起こり得るため、「共感力が高いかどうか」を単一の数値に単純化できない理由の一つになっています。

個人的苦痛は「思いやり」とは違う

4つの次元のうちの1つである個人的苦痛は、共感的関心のように必ずしも肯定的な特性とは限らない点に注意が必要です。個人的苦痛が高い人は、緊急事態で相手を助けようとするより、自分自身がまず動揺してしまい、冷静に対応するどころか固まってしまうことがあります。これは、その状況が相手への関心よりも自分自身の不安を強く刺激してしまうためです。この違いを理解することは、感受性の高い一部の人がプレッシャー下でうまく行動できない理由を知る手がかりになります。

よくある質問

すべての次元で高得点を取ることが理想なのですか?

必ずしもそうではありません。特に個人的苦痛が高いと、危機的な状況で冷静かつ有効に対応することがかえって難しくなる場合があるため、4つすべてを最大化するより、各次元のバランスが取れていることの方が一般的には健全とされています。

共感力は訓練で伸ばせるものですか?

観点取得のような認知的共感は、会話やメディアの中で意識的に他者の視点を考える練習を通じて、比較的伸ばしやすいと一般的に考えられています。情緒的な反応は直接的に訓練しにくい部分がありますが、自分自身のパターンへの気づきを深めることで、個人的苦痛を引き起こしやすい状況への対処に役立つことがあります。