インドの古典舞踊バラタナティヤム完全ガイド

南インド・タミルナードゥの寺院舞踊に起源を持ち、今日ではインドを代表する古典舞踊の一つとなったバラタナティヤム。最初に知っておきたい基本概念をまとめました。

起源とサディル時代

バラタナティヤムは、南インド・タミルナードゥ地方のヒンドゥー寺院でデーヴァダーシー(寺院の舞姫)たちが踊っていた舞踊にルーツを持ちます。20世紀初頭に再構築される以前は「サディル」などの名で呼ばれており、今日の名称と形式は1930年代以降の復興・再構成の過程を経て定着しました。

デーヴァダーシー伝統とその歴史

寺院に属して舞踊や儀礼を担っていたデーヴァダーシー制度は、植民地時代以降、社会的批判と法的禁止を受けて大きく縮小しました。その後、ルクミニ・デーヴィー・アルンダレーらの尽力によりこの舞踊が舞台芸術として再構成され、今日のバラタナティヤムへとつながりましたが、この過程には複雑な歴史的評価が伴います。

ニルッタ・ニルティヤ・ナーティヤという3つの構成要素

バラタナティヤムは、純粋なリズム表現であるニルッタ、感情や意味を表すニルティヤ、物語を伝えるナーティヤという3つの要素が組み合わさった舞踊として説明されます。この3要素の調和は、インド古典舞踊の理論書『ナーティヤ・シャーストラ』の美学体系に基づいています。

ムドラー(手の動き)という言語

手と指の形で意味を伝えるムドラーは、バラタナティヤムの中心的な表現手段です。片手で表すアサムユクタ・ハスタと両手を使うサムユクタ・ハスタに分かれ、それぞれの決まった手の形が神、動物、自然物、抽象的な概念などを象徴します。

アダヴ、舞踊の基本単位

アダヴは、足の動き、姿勢、手の動きが組み合わさったバラタナティヤムの基本的な動きの単位で、舞踊家は長期間にわたりさまざまなアダヴを繰り返し練習して体の姿勢とリズム感を身につけます。この基本をしっかり固めた後に初めて、感情表現を伴うニルティヤの動きへと進みます。

マールガム、決まった上演の順序

伝統的なバラタナティヤムの独舞公演は、マールガムと呼ばれる決まった順序に従うことが多いです。神への礼拝で始まるアラーリプから始まり、徐々にリズムと表現が複雑になる段階を経て、最後は純粋なリズム表現で締めくくる構成が一般的です。

衣装と伴奏音楽

舞踊家は扇のように広がる独特のひだ飾りが付いたサリー風の衣装を身にまとい、足には鈴の飾り(ガジラ)を付けて足の動きのリズムを音で表現します。伴奏は南インドのカルナータカ音楽の伝統に従い、ボーカルとミルダンガム(打楽器)、バイオリンなどの楽器が組み合わさります。

今日の位置づけと世界的な広がり

バラタナティヤムはインド8大古典舞踊の一つに数えられ、今日ではインド国内だけでなく、海外のインド系コミュニティやさまざまな国の舞踊学校でも継続的に継承・教育されています。宗教的な背景を持つ舞踊として始まりましたが、現在では世俗的な舞台芸術としても幅広く上演されています。

一つ一つの身振りに意味が込められた舞踊

バラタナティヤムは単に美しい動きを見せる舞踊ではなく、ムドラーと呼ばれる手の動き一つ一つに定められた意味が込められた象徴体系を持つ芸術です。舞踊家は長年の訓練を通じてこの手の動きの文法を身につけ、それによって神話の物語や詩の一節を観客に伝えます。そのため、バラタナティヤムを十分に鑑賞するには、動きの美しさだけでなく、そこに込められた物語的な意味にも注目する必要があります。

再構築を経て今日に至った伝統

バラタナティヤムはデーヴァダーシー制度の衰退とともに一時衰えましたが、20世紀初頭から中頃にかけて複数の芸術家や学者の努力によって舞台芸術として再構成され、今日の姿を整えました。この歴史的背景を理解すると、伝統は固定されたものではなく、時代とともに再解釈されながら受け継がれてきたことがわかります。

よくある質問

バラタナティヤムはインドで唯一の古典舞踊ですか?

いいえ。インドには地域ごとに発展したさまざまな古典舞踊があり、バラタナティヤムはその中でもタミルナードゥ地方を代表する舞踊として広く知られる、8大古典舞踊の一つです。

バラタナティヤムを習うには特別な体格が必要ですか?

特別な体格よりも、幼い頃から長期間、基本動作(アダヴ)を繰り返し練習して柔軟性、筋力、リズム感を養うことが重要です。大人になってから始める人も珍しくありません。