保有効果とは? 自分のものになると価値が上がる理由

同じ物でも、自分のものになった瞬間に価値が高く感じられる――これが保有効果です。その根拠を見ていきましょう。

定義:所有した瞬間に価値が上がる

ある物を所有するようになった瞬間、それを所有する前よりもその物の価値を高く評価するようになる傾向を指します。同じ物でも「自分のものを売るときに受け取りたい金額」が「同じ物を買うときに支払おうとする金額」より高くなることが特徴です。

由来:リチャード・セイラーが名付けた概念

行動経済学者リチャード・セイラーは1980年の論文でこの現象に「保有効果(endowment effect)」という名前をつけました。その後、ダニエル・カーネマン、ジャック・ネッチ、リチャード・セイラーが1990年に発表した有名な「マグカップ実験」で、マグカップを無作為に受け取った人たちが受け取らなかった人たちよりもそのカップを売るときにずっと高い価格を要求することが確認され、この概念が実証的に裏付けられました。

マグカップ実験の具体的な内容

実験ではマグカップを受け取った「売り手」グループは平均で約7ドルもらわないと売らないと答えたのに対し、カップを受け取らなかった「買い手」グループは平均約3ドルほどしか支払う意思がないと答えました。同じ物なのに、所有しているかどうかによって評価額の差がほぼ2倍に広がったのです。

実生活の例:中古取引と不動産

自分が長く使った物を中古で売るとき、相場より高い価格をつけようとするケースはよくありますが、これは物への愛着だけでなく、所有していたという事実そのものが価値評価を引き上げるためだと説明されます。家を売るときにも、所有者がつける価格が客観的な相場より高くなる傾向が報告されています。

和らげる方法

取引を決める際に「もしこの物をまだ持っていないとしたら、今この価格で買うだろうか」と自問してみることが、保有効果による価格の歪みを点検する方法としてよく提案されます。

伝統的な経済学の前提から外れる行動

伝統的な経済学の理論では、物の価値は所有しているかどうかに関係なく一定であるべきだと仮定しますが、保有効果は実際の人間の行動がこの仮定と異なることを示す代表的な事例として挙げられます。これはリチャード・セイラーが2017年にノーベル経済学賞を受賞する際の根拠となった行動経済学の重要な発見のひとつとして紹介されています。

交渉や取引戦略における含意

中古取引や不動産の売買交渉で、売り手と買い手が異なる基準で価値を評価する理由のひとつとして保有効果が挙げられます。売り手は所有していた物により高い価値を感じる一方、買い手はそうした愛着を持たずに市場価格を基準に判断するため、価格に対する見解の差が生まれやすくなります。

よくある質問

保有効果はすべての物に同じように現れますか?

いいえ。個人的な愛着や使用経験が伴う物ほど保有効果が強く現れる傾向があり、単に転売目的で保有している物(投資目的の株式など)では相対的に弱く現れるという研究結果があります。

保有効果による価格の歪みを減らすにはどうすればよいですか?

物を売ったり評価したりする際に「もしこの物をまだ持っていないとしたら、この価格で買うだろうか」と自問してみる方法が実用的に提案されています。客観的な相場や第三者の評価を併せて参考にするのも役立ちます。