共感化-システム化(E-S)理論を解説

人は、他者の感情を理解する力と、システムの規則を分析する力を、それぞれ異なるバランスで持っています。心理学者サイモン・バロン=コーエンは、そのバランスを説明するために共感化-システム化理論を提唱しました。

共感化(EQ)

共感化とは、他者の感情や考えを察知し、それにふさわしい感情で応じようとする働きです。心理学者サイモン・バロン=コーエンは、共感指数(Empathy Quotient, EQ)という質問紙でこの個人差を測定しており、感情を読み取る認知的な側面と、相手の感情に合わせて反応する情緒的な側面の両方を含むとされています。

システム化(SQ)

システム化とは、規則・パターン・構造を分析し予測しようとする働きで、あるシステムがどう機能しているかを理解したいという傾向です。システム化指数(Systemizing Quotient, SQ)という質問紙で測定され、機械や数の体系だけでなく、自然現象や抽象的な規則体系への関心まで幅広く含む概念とされています。

E型(共感化優位型)

E型とは、システム化よりも共感化の能力が相対的に発達しているタイプを指します。EQがSQより明らかに高い場合に分類され、対人関係や感情が絡む場面で強みを発揮する傾向があるとされています。

S型(システム化優位型)

S型とは、共感化よりもシステム化の能力が相対的に発達しているタイプを指します。SQがEQより明らかに高い場合に分類され、規則や構造を分析する場面で強みを発揮する傾向があるとされています。

B型(バランス型)

B型とは、共感化とシステム化の能力がほぼ同程度に発達しているタイプを指します。2つの指数の間に明確な差がない場合に分類され、理論上は人口のかなりの割合がこのタイプに該当するとされています。

極端なS型

極端なS型とは、S型のさらに極端な形で、システム化能力が非常に高い一方で共感化能力がかなり低いタイプを指します。バロン=コーエンは、このタイプが自閉スペクトラムの特性と関連している可能性を提唱しましたが、これは学界で支持と批判の両方がある、今も議論が続いている仮説である点に注意が必要です。

極端なE型

極端なE型とは、E型のさらに極端な形で、共感化能力が非常に高い一方でシステム化能力がかなり低いタイプを指します。5つのタイプの中では比較的まれな組み合わせとされ、他者への感受性は非常に高い一方、規則やシステムを分析する課題には苦労することがあるとされています。

EQとSQは知能検査ではない

この理論で使われるEQ(共感指数)とSQ(システム化指数)は、IQ(知能指数)とは異なる概念です。これらは知能の高低を示すものではなく、自己申告式の質問紙によって「その人がどのような方法で世界を理解する傾向があるか」を示す指標です。

論争のある仮説「極端な男性脳理論」

バロン=コーエンは、極端なS型が自閉スペクトラムの特性と関連している可能性があるという「極端な男性脳」仮説を提唱しました。この仮説は、性別に関する固定観念を強めかねないという批判や、自閉症を単純化しすぎているという批判を受けており、今も学界で活発に議論が続いています。確立した定説としてではなく、あくまで一つの理論的な提案として理解するのが正確であり、このページも診断の枠組みとしては扱っていません。

よくある質問

S型は共感がまったくできないという意味ですか?

いいえ。S型は共感化よりもシステム化の能力が相対的に発達しているという意味であり、共感能力がまったくないという意味ではありません。ほとんどの人は両方の能力をある程度持っており、その相対的なバランスが異なるだけです。

このタイプは年齢とともに変わることがありますか?

共感化とシステム化の傾向は比較的安定したものとして扱われますが、職業や環境、意識的な努力によって相対的なバランスがある程度変化することもあるとされています。