バウマイスターの所属欲求理論を徹底解説

他者とつながりを結ぼうとする欲求が、なぜ人間の最も根源的な動機の一つとして扱われるのか。その理論的な根拠を見てみましょう。

所属欲求とは

他者と持続的で肯定的な絆を結び維持しようとする、人間の根源的で普遍的な動機です。進化的な背景から生まれた基本欲求として説明され、空腹や渇きに準ずる性質を持ち、文化や個人差にかかわらずほとんどの人に現れるとされます。

充足のための2つの条件

①定期的で肯定的な相互作用、②時間が経っても維持される安定的で互いを気遣う関係の枠組み、この2つの条件が両方とも満たされて初めて所属欲求が満たされると説明されます。どちらか一方だけでは不十分というのがこの理論の核心的な主張で、頻繁に会っていても互いへの関心がなければ十分な所属感を得ることは難しいとされます。

飽和効果

他の欲求と同様に、所属欲求も十分に満たされると追加の関係を求める動機が弱まる傾向を示すという概念です。すでに親密な関係が安定的に維持されていれば、新しい関係を築こうとする動機が相対的に弱まる可能性があると説明されます。

社会的排斥の影響

所属欲求が満たされないと、不安、抑うつ、孤独感だけでなく身体的な健康問題とも関連しうると報告されています。仲間はずれや排斥を経験すると、認知機能の低下や攻撃性の増加など様々な否定的反応が現れうるという研究が、この理論を裏付ける根拠として提示されています。

関係の質 対 量

所属欲求は関係の数よりも、少数の関係がどれだけ安定的で気遣いのあるものかがより重要だと説明されます。友人が多くても深い絆がなければ、所属感が十分に満たされない可能性があることを示唆しています。

所属欲求理論とは?

心理学者ロイ・バウマイスターとマーク・リアリーが1995年に発表した影響力の大きい論文「The Need to Belong」で提唱した理論で、所属感への欲求を空腹や渇きに匹敵する、根源的で普遍的な人間の動機として扱い、副次的あるいは任意の欲求としては扱いません。

マズローの欲求階層説や自己決定理論との関係

マズローの欲求階層説でも所属と愛の欲求はピラミッドの一段階として登場しますが、バウマイスターとリアリーの理論は所属をひとつの段階としてよりも、達成や権力といった他の様々な動機の根底に流れる基盤的な動機として捉える点が異なります。自己決定理論では関係性が自律性・有能感と並ぶ3つの基本的心理欲求の一つとして扱われるのに対し、所属欲求理論はこのつながりへの欲求がどのような条件で満たされ、満たされないと何が起きるのかを具体的に掘り下げている点に違いがあります。

よくある質問

内向的な人は所属欲求が弱いのですか?

社会的な交流をどれだけ好むか(内向性・外向性)は、所属欲求の強さとは別の次元として扱われます。内向的な人でも、少数の深い関係を通じて同じくらい強い所属欲求を持つことがあります。

オンライン上の関係でも所属欲求は満たされますか?

定期的な接触と本物の安定した気遣いが伴えば、オンライン上のやり取りも所属欲求の充足に寄与しうるとする研究もありますが、対面での関係を完全に代替できるかどうかについては今も議論が続いています。