アルダファーのERG理論を解説

5段階を3つに、そして一方向だけではない動き方を加えた理論。ERG理論がマズローの欲求階層説をどう作り替えたのかを見ていきましょう。

存在欲求

生存に必要な衣食住、身体的安全、経済的安定などの物理的欲求。マズローの欲求5段階説における生理的欲求と安全欲求を合わせた概念に近いと説明されます。

関係欲求

家族、同僚、友人など、意味のある人々と関係を築き、認められたいという欲求。マズロー理論の社会的な所属欲求と、他者から得る尊重欲求の部分をあわせ持つ概念として扱われます。

成長欲求

自らの能力を伸ばし、潜在能力を発揮して自己を発展させたいという欲求。マズロー理論の自尊欲求と自己実現欲求をあわせ持つ概念として扱われ、創造的で生産的な活動を通じて満たされると説明されます。

欲求退行の原理

上位の欲求が満たされない状態が続くと、かえって下位の欲求への渇望が強まるという原理。心理学者クレイトン・アルダファーが、マズローの順次的な階層概念を補うために提示した考え方で、例えば成長欲求が満たされないとき、関係欲求や存在欲求への執着が強まる現象を説明します。

満足前進の原理

下位の欲求が満たされると、自然に関心が上位の欲求へと移っていくという原理。マズローの階層説と共通する部分ですが、ERG理論はここに欲求退行の原理を加えることで、欲求が一方向だけに動くわけではないことを強調している点が異なります。

ERG理論とは、マズロー理論との最大の違い

心理学者クレイトン・アルダファーは、マズローの欲求5段階説を存在(Existence)、関係(Relatedness)、成長(Growth)という3つの欲求に単純化しました。マズローの理論を完全に否定したわけではなく、実際の人々の欲求充足プロセスを観察した結果を踏まえて、より柔軟な形に理論を調整したと説明されます。最大の違いは柔軟性にあります。マズローは下位の欲求が満たされて初めて上位の欲求に移るという厳格な階層を示しましたが、アルダファーは複数の欲求が同時に働きうるとし、順序も必ずしも下位から上位へとは限らないとしました。特に上位の欲求が満たされないとき、かえって下位の欲求へ関心が戻る「欲求退行の原理」を示した点が、ERG理論で最も独創的な部分とされています。

職場ではどのように現れるのか

例えば、職務における成長欲求(昇進、能力開発)が満たされない状態が続く社員は、かえって同僚との親睦や社内の福利厚生(関係・存在欲求)により強くこだわるようになる、といった形で説明されます。そのため組織マネジメントの分野では、ある欲求が満たされない状況にある社員に対して、別の経路で欲求を満たす手立てがないかを検討するための枠組みとして紹介されることがあります。

よくある質問

ERG理論はマズロー理論より優れているのですか?

どちらか一方が絶対的に優れているわけではなく、両理論とも人間の欲求の異なる側面を強調していると考えられています。マズロー理論は直感的で理解しやすい構造が、ERG理論は実際の観察により合致した柔軟性が、それぞれの強みとされています。

欲求退行の原理は実生活でどんな例に当てはまりますか?

例えば、望むだけの自己啓発や成長の機会が得られない状況が続くと、その不満を解消するためにかえって人間関係や、給与・福利厚生といった物質的な報酬により強くこだわるようになる、といった例が挙げられます。