ERG理論とは、マズロー理論との最大の違い
心理学者クレイトン・アルダファーは、マズローの欲求5段階説を存在(Existence)、関係(Relatedness)、成長(Growth)という3つの欲求に単純化しました。マズローの理論を完全に否定したわけではなく、実際の人々の欲求充足プロセスを観察した結果を踏まえて、より柔軟な形に理論を調整したと説明されます。最大の違いは柔軟性にあります。マズローは下位の欲求が満たされて初めて上位の欲求に移るという厳格な階層を示しましたが、アルダファーは複数の欲求が同時に働きうるとし、順序も必ずしも下位から上位へとは限らないとしました。特に上位の欲求が満たされないとき、かえって下位の欲求へ関心が戻る「欲求退行の原理」を示した点が、ERG理論で最も独創的な部分とされています。
職場ではどのように現れるのか
例えば、職務における成長欲求(昇進、能力開発)が満たされない状態が続く社員は、かえって同僚との親睦や社内の福利厚生(関係・存在欲求)により強くこだわるようになる、といった形で説明されます。そのため組織マネジメントの分野では、ある欲求が満たされない状況にある社員に対して、別の経路で欲求を満たす手立てがないかを検討するための枠組みとして紹介されることがあります。
よくある質問
ERG理論はマズロー理論より優れているのですか?
どちらか一方が絶対的に優れているわけではなく、両理論とも人間の欲求の異なる側面を強調していると考えられています。マズロー理論は直感的で理解しやすい構造が、ERG理論は実際の観察により合致した柔軟性が、それぞれの強みとされています。
欲求退行の原理は実生活でどんな例に当てはまりますか?
例えば、望むだけの自己啓発や成長の機会が得られない状況が続くと、その不満を解消するためにかえって人間関係や、給与・福利厚生といった物質的な報酬により強くこだわるようになる、といった例が挙げられます。